自己破産という言葉を見聞きしたことはあるかと思います。借金で首が回らなくなったときの救済措置として国で認められた債務整理の一つです。
どうしても立ち行かなくなった場合は自己破産を検討する必要があります。本記事では自己破産について解説し、メリットやデメリットなどについても紹介します。
自己破産とは?
自己破産とは、現在自分が負っている債務(借金)を全額免除してもらう手続きです。裁判所に破産手続きを申し立て、免責を認めてもらうことによって借金をゼロにできます。自己破産は「支払不能」の状態である場合に申し立てができます。
「支払不能」とは、今後の状態を総合的にかんがみた結果、得られる収入等から債務の返済は不可能であろうと判断できる状態です。これは破産法2条11項に明記されています。
11 この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成十八年法律第百八号)第二条第九項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。
引用:e-Gov法令検索 破産法(平成十六年法律第七十五号)
(https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075#Mp-Ch_1-At_2)
しかしながら実際には、単純に借金をなくしてもらえるわけではなく、自分の所有している財産等が没収され、お金に換えられたあとに債権者への支払いに充てられます。
自己破産の種類とは?
自己破産の種類には大きく分けて2種類があります。
- 同時廃止
- 管財事件
同時廃止
同時廃止とは破産手続きが開始されると同時に終了することを言います。債権者への支払いに充てる財産が債務者にない場合は、それ以上破産手続きを続ける意味がありません。
そのため、破産手続き開始と同時に終了します。同時廃止後は債務者に免責が認められるかどうか、といったことだけが問題となります。
管財事件
管財事件は裁判所が任命した破産管財人により債務者の財産をお金に換えたあと、債権者に支払いを行う破産手続きを言います。債権者に支払いが行えるだけの財産を債務者が所有していた場合に管財事件となります。
管財事件後の自分の所有財産はすべて破産管財人が管理しお金に換えますので、自分の所有物ではなくなります。
少額管財事件
管財事件には「少額管財事件」という手続き方法もあります。こちらは管財事件よりも手続きの負担を軽減した自己破産となります。個人事業主や中小企業などが破産する場合、ほぼ確実に管財事件となってしまいます。
ですが、個人事業主や中小企業などは時間と費用がかかると負担が大きくなってしまいます。こういったケースにおいて、少額管財事件という手続きを行うことで負担を軽減できるのです。
自己破産のメリット
自己破産のメリットとしては以下が挙げられます。
- 借金がすべてなくなる
- 債権者からの取り立てが止まる
- ある程度の財産は残せる
借金がすべてなくなる
自己破産を行えば借金はすべてなくなります。つまり、借金の金額がどれだけ多くても法的な支払い義務はすべて免除されるのです。債務整理の中でも借金をゼロにできるのは自己破産のみです。
債権者からの取り立てが止まる
弁護士等の専門家に依頼して自己破産を行うことで、債権者からの取り立てはストップします。これは弁護士等の専門家が債権者に対して受任通知を送付するためです。
受任通知とは、債務者が弁護士等の専門家に債務整理を依頼したことを債権者に知らせる通知です。債権者はこの通知を受け取ったあとは、貸金業法 21条1項9号の規定により債務者への取り立てはできなくなります。
九 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、
中略
当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。引用:e-Gov法令検索 貸金業法(昭和五十八年法律第三十二号)
(https://laws.e-gov.go.jp/law/358AC1000000032#Mp-Ch_2-Se_2-At_21)
(※中略及び一部抜粋)
ある程度の財産は残せる
自己破産と聞くと何もかも持っていかれるイメージがありますが、最低限生活に必要な財産は残してもらえます。いわゆる自由財産と言われるもので、自己破産後も所有が認められる破産財団に属しない財産です。具体的には以下となります。
- 99万円以下の現金
- 破産手続き開始後に債務者が新たに得た「新得財産」
- 最低限の生活に必要な「差押禁止財産」
- 自由財産拡張によって裁判所に保有が認められた財産
- 破産管財人が破産財団から放棄した財産
以上の財産は破産管財人の管理下には置かれず、自己破産後も自由に所有が認められます。
破産財団とは
破産財団とは、破産管財人が管理する債務者の財産の総体(集合体)のことを言います。財団という名称から、何かの組織や団体と勘違いしてしまいがちですが、法律上では「財産の集まり」という意味があります。
自己破産のデメリット
自己破産のデメリットとしては以下が挙げられます。
- 新たな借入はできない
- 官報に載る
- 連帯保証人へ返済請求がいく
- 一部就けない職業が出てくる
新たな借入はできない
自己破産を行うと、いわゆるブラックリストに載るため新たな借入はできなくなります。信用情報に傷がついた状態となりますので、以後ブラックリストから除外される5~10年程度の間は同様の状態が継続します。
官報に載る
自己破産は裁判所を通す債務整理のため、国が発行する官報に個人情報等が載ります。官報とは国の法令や公示事項を掲載して国民に周知させるための公報です。
ですが、官報を閲覧する人物は市役所や区役所の税金担当者、信用情報機関等のごく一部の人間に限られるため、一般の人にこれらの情報が知られることはまずないと言えます。
連帯保証人へ返済請求がいく
連帯保証人が付いている借金がある場合、自己破産を行うと連帯保証人へ返済請求がいきます。自己破産は手続きした本人の債務返済義務は免除されますが、連帯保証人の返済義務は免除されません。
そのため自己破産を行う前には、連帯保証人とよく協議したうえで行う必要があります。
一部就けない職業が出てくる
破産手続きが継続している状態においては、一部就けない職業があります。例えば弁護士や税理士、公認会計士といった士業のほか、貸金業、建設業といった職業には就けません。主に以下となります。
- 弁護士
- 司法書士
- 税理士
- 行政書士
- 建築士
- 公認会計士
- 宅地建物取引士
- 土地家屋調査士
- 貸金業
- 警備員
- 公証人
など
職業制限は破産手続きの開始から免責決定までとなり、自己破産手続きが免責されると復権し再度職業に就けます。
自己破産の流れとは?
自己破産の流れは以下となります。
- 弁護士に自己破産を相談・依頼します
- 弁護士による受任通知で取り立てがとまります
- 裁判所に提出する書類を作成する
- 破産審尋が行われます
- 自己破産の手続き開始が決定されます
- 管財事件・少額管財事件の場合は管財人面接や債権者集会が行われます
- 免責審尋が行われます
- 免責許可の決定が行われ「免責許可」及び「免責不許可」が確定します
まとめ
自己破産では借金をゼロにできます。債務者救済措置の最終手段として自己破産を選択できますが、財産等は裁判所に没収され破産管財人に管理されることになります。
自己破産は債務者を経済的に立ち直らせることが目的ですので「借金を簡単になくせるもの」と安易に考えずに、最終手段として捉え慎重に行いましょう。