個人再生という言葉を聞いたことはあるでしょうか。借金を大幅に減額できる債務整理のひとつです。「安定した収入があるのに借金が一向に減らない」といった場合に活用すると、借金返済が非常に楽になります。
本記事では個人再生について解説し、メリットやデメリットについても紹介します。
個人再生とは
個人再生とは借金の残債を大幅に減額してもらう手続きのことです。裁判所から再生計画の認可決定を受けることで個人再生が成立します。
減額されたあとの残りの借金を原則3年、やむを得ない事情がある場合は5年かけて分割で返済していきます。個人再生において残債を完済することで、法律上からも返済義務は免除されます。
個人再生のメリット
個人再生のメリットとしては以下が挙げられます。
- 債務は5分の1まで減らせる
- 高額な財産を残せる
- 債権者からの取り立てが止まる
債務は5分の1まで減らせる
個人再生では再生委員が建てた再生計画が認可されれば、債務はおおむね5分の1まで減額されるケースが多くあります。つまり300万円の借金があれば、60万円までの減額が見込めます。
高額な財産を残せる
個人再生では家や車といった高額な財産を残せます。家の場合は住宅ローン特則という制度を利用し、個人再生を行っている間も住宅ローンを支払い続けることで、家を所有し続けられます。
また車の場合は、ローンの支払いが終わっている場合に限り所有し続けられます。ローンの支払いが終わっていない場合は、原則としてローン会社が車を回収します。
債権者からの取り立てが止まる
弁護士等の専門家に依頼して個人再生を行うことで、債権者からの取り立てはストップします。これは弁護士等の専門家が債権者に対して受任通知を送付するためです。
受任通知とは、債務者が弁護士等の専門家に債務整理を依頼したことを債権者に知らせる通知です。債権者はこの通知を受け取ったあとは、貸金業法 21条1項9号の規定により債務者への取り立てはできなくなります。
(取立て行為の規制)
第二十一条
九 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、
中略
当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。引用:e-Gov法令検索 貸金業法(昭和五十八年法律第三十二号)
(https://laws.e-gov.go.jp/law/358AC1000000032#Mp-Ch_2-Se_2-At_21)
(※中略及び一部抜粋)
個人再生のデメリット
- 新たな借入はできない
- 官報に載る
- 保証人へ返済請求がいく
- 個人再生を利用できないこともある
新たな借入はできない
個人再生を行うと、いわゆるブラックリストに載るため新たな借入はできなくなります。信用情報に傷がついた状態となりますので、以後ブラックリストから除外される5~10年程度の間は同様の状態が継続します。
官報に載る
個人再生は裁判所を通す債務整理のため、国が発行する官報に個人情報等が載ります。官報とは国の法令や公示事項を掲載して国民に周知させるための公報です。
ですが、官報を閲覧する人物は市役所や区役所の税金担当者、信用情報機関等のごく一部の人間に限られるため、一般の人にこれらの情報が知られることはまずないと言えます。
保証人へ返済請求がいく
個人再生を行うと債権者は保証人へ返済請求を行います。そのため個人再生を行う旨を事前に保証人と協議しておく必要があります。ですが、住宅ローンの場合は住宅ローン特則の適用により、保証人に返済請求がいくことはありません。
個人再生を利用できないこともある
個人再生は返済を継続させられるだけの収入がない場合、利用できないこともあります。民事再生法241条2項4号に「定期的な収入を得ている者に該当しない」場合は不認可の決定がされる旨の規定が制定されています。
(再生計画の認可又は不認可の決定等)
第二百四十一条前条第二項の規定により定められた期間が経過したときは、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。四 再生債務者が、給与若しくはこれに類する定期的な収入を得ている者に該当しないか、又はその額の変動の幅が小さいと見込まれる者に該当しないとき。
引用:e-Gov法令検索 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)
(https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225#Mp-Ch_13-Se_2-At_241)
※一部抜粋
こういった規定により、収入が不安定であったり失業中であったりした場合は、個人再生が利用できない可能性があります。
個人再生ができる条件とは
個人再生が利用できる条件として以下が挙げられます。
- 継続的な収入があり再生委員が建てた再生計画通りに返済が実行できる
- 借金の総額が5,000万円以下である
- 債権者からの反対によって書面決議が否決されない
- 過去7年以内に以下の決定を受けていない場合
・ハードシップ免責
・再生計画認可
・破産手続免責
以上の条件をクリアしている場合に個人再生が認可される可能性が高まります。
個人再生には2種類ある
個人再生には以下の2種類があります。
- 小規模個人再生
- 給与所得者再生
小規模個人再生
小規模個人再生は個人事業主やアルバイト等でも申請ができる基本的な個人再生手続きです。要件を満たすことで誰でも申請ができますが、債権者からの不同意によって書面決議が否決されないことが要件となります。
給与所得者再生
給与所得者再生はいわゆる「企業の正社員」など、給与所得者を対象とした個人再生です。安定した収入が見込め収入の変動が少ないと認められる場合に利用できます。
給与所得者再生は小規模個人再生と違い債権者の決議がないため、債権者に反対され不同意となることはありません。
個人再生手続きの流れとは
個人再生手続きの流れは以下となります。
- 個人再生手続きを弁護士に依頼する
- 弁護士が受任通知を債権者へ郵送する
- 法定金利に基づいた引き直し計算を行う
- 個人再生申し立ての書類を準備する
- 裁判所に個人再生の申し立てを行う
- おおむね1ヶ月後あたりから個人再生手続きが開始される
- 債権者へ債権届出を郵送する
- 債権認否一覧表を提出する
- 弁護士が再生計画案を提出する
- 書面による決議が行われる
- 裁判所から再生計画の認可がおりる
- 再生計画に沿って返済を開始する
まとめ
個人再生では借金を5分の1まで減額できるだけでなく、家や車といった高額な財産も手放さずに債務整理が行えます。債務者には非常にありがたい債務整理ですが、一方で安定した収入があることが条件となるなど、厳しめの審査もあります。
個人再生は手続きが複雑で失敗する可能性もあることから、個人で行わず弁護士に依頼することをおすすめします。