「個人再生1回目の再生計画案でも借金返済がきついので個人再生2回目を行いたい」と考える人もいるでしょう。
実際、個人再生2回目は行えるのでしょうか?本記事ではそのような人のために個人再生2回目について解説し、注意点や代替策などについても紹介します。
個人再生は2回目もできるのか?
結論から述べてしまうと個人再生は2回目もできます。
ですが、個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つがあり、1回目に行った個人再生が「小規模個人再生」なのか「給与所得者等再生」なのかで2回目の条件が異なります。
- 1回目に「小規模個人再生」を行った場合
- 1回目に「給与所得者等再生」を行った場合
1回目に「小規模個人再生」を行った場合
1回目に「小規模個人再生」を行った場合は2回目に再度「小規模個人再生」、新規「給与所得者等再生」どちらも申立てができます。
1回目に「給与所得者等再生」を行った場合
1回目に「給与所得者等再生」を行った場合、2回目の「給与所得者等再生」を申し立てるには1回目の認可決定から7年以内は申立てができません。
一方、2回目に「小規模個人再生」を選択する場合は申立てができます。
つまり「小規模個人再生」は期間及び回数の制限は特にありませんが「給与所得者等再生」の場合のみ、7年以内の申立ては不可能という制限があるのです。
これは、民事再生法・第239条5項2号に制定されています。
二 再生債務者について次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に当該申述がされたこと。
イ 給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
引用:e-Gov法令検索 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)
(https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225#Mp-At_239)
個人再生2回目の制限比較表
以下に個人再生2回目を行う場合の制限について比較表を作成しました。給与所得者等再生に限り、2回連続で申立てを行う場合は1回目の認可決定より7年以内は申立てが不可能となっています。
個人再生2回目の制限について | ||
1回目の申立て | 2回目の申立て | 制限について |
小規模個人再生 | 小規模個人再生 | →期間・回数共に制限なし |
小規模個人再生 | 給与所得者等再生 | →期間・回数共に制限なし |
給与所得者等再生 | 小規模個人再生 | →期間・回数共に制限なし |
給与所得者等再生 | 給与所得者等再生 | →前回認可決定より7年以内は不可 |
給与所得者等再生が2回目でなくても期間7年以内の制限がある場合
給与所得者等再生が2回目でなくても期間7年以内の制限がある場合があります。それが以下となります。
- 自己破産を行っていた場合
- ハードシップ免責を行っていた場合
自己破産を行っていた場合
給与所得者等再生の申立てより7年以内に自己破産の免責許可決定が確定していた場合、給与所得者等再生を行うことはできません。
これは、民事再生法・第239条5項2号に制定されています。
二 再生債務者について次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に当該申述がされたこと。
ハ 破産法第二百五十二条第一項に規定する免責許可の決定が確定したこと 当該決定の確定の日
引用:e-Gov法令検索 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)
(https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225#Mp-At_239)
ハードシップ免責を行っていた場合
給与所得者等再生の申立てより7年以内にハードシップ免責の決定が確定していた場合、給与所得者等再生を行うことはできません。
これは、民事再生法・第239条5項2号に制定されています。
二 再生債務者について次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に当該申述がされたこと。
ロ 第二百三十五条第一項(第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
引用:e-Gov法令検索 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)
(https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225#Mp-At_239)
ハードシップ免責とは
ハードシップ免責とは、個人再生の再生計画が認可されたあと返済が困難になってきたときに、借金の残債返済義務を免除してもらえる制度です。
例えば、それまで再生計画通りに借金を返済していたが、突然の怪我や病気、失業などやむを得ない事情により、努力はしたがそれでも返済が困難になるときがあります。
こういったときに、返済金額の4分の3以上返し終えていた場合に限り、残りの借金返済義務を免除してもらえるのです。
個人再生2回目の注意点とは
個人再生の2回目は1回目と比べて少し難しくなる傾向にあります。そのため以下のポイントに注意をしておく必要があります。
- 裁判所の審査が厳しくなる傾向にある
- 債権者の同意が得られない可能性が高まる
- 再度の減額はできない
裁判所の審査が厳しくなる傾向にある
個人再生2回目の手続き自体は問題なく行えますが、再生計画案において裁判所の審査が厳しくなる傾向にあります。
一度借金を減額できたにも関わらず、再度借金減額を申し立てるわけですから、裁判所を納得させられる再生計画案の提出が必要になります。
また個人再生委員が選任された場合、再生委員との面談も行われます。
個人再生2回目を行うにあたって、経緯や趣旨などを質問されることもありますので、そういったこともきちんと説明できるようにしておく必要があるでしょう。
債権者の同意が得られない可能性が高まる
小規模個人再生では、認可が決定されるためには債権者の同意が必要になります。このため、個人再生2回目ともなると債権者が納得せず、同意を得られない可能性が高まります。
この場合の対策としては、小規模個人再生ではなく給与所得者等再生に切り替え、再度申立てを行います。このように個人再生2回目では、債権者の心情も考慮する必要があるのです。
再度の減額はできない
個人再生では、おおむね借金の5分の1~10分の1(80~90%)の減額が期待できます。
この減額された額を最低弁済額といいますが、個人再生の2回目を行っても、この最低弁済額から更に減額できるわけではありません。
個人再生2回目では、個人再生1回目を行う前の借金総額から、すでに返済し終えた借金分を差し引いた額を、新たな再生債権額の基準として最低弁済額を決定します。
つまり以下のようになります。
(✕)個人再生2回目でこのような減額にはなりません |
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(◯)個人再生2回目ではこのような減額になります |
|
個人再生2回目において、このように最低弁済額からさらに減額されるわけではありませんので、こういった点にも留意しておく必要があります。
個人再生2回目が失敗した場合の対処法
- 個人再生を再度行う
- 他の債務整理を検討する
- 即時抗告する
個人再生を再度行う
個人再生は「給与所得者等再生」と「小規模個人再生」があり、「給与所得者等再生」は再度申し立てるのに7年の期間が必要ですが、「小規模個人再生」ではそういった制限はなく何度でも申立てを行えます。
そのため、個人再生2回目が失敗した場合でも「小規模個人再生」であれば、再度申し立てられます。裁判所や債権者を納得させられるように、再生計画を何度も練り直すことも一つの手として挙げられます。
ですが注意点として、裁判所費用や弁護士費用は都度かかることを留意しておく必要があります。
他の債務整理を検討する
個人再生2回目が失敗したのをきっかけに、自己破産など他の債務整理を検討するのも一つの手です。自己破産は個人再生より借金の減額幅が大きく借金をゼロにできます。
しかしながら、住宅や車などの高額な財産はすべて没収されるため、そういったことも含めて総合的に判断する必要があります。
即時抗告する
即時抗告によって不認可を覆すことは難しいとされていますが、選択肢としては検討できる方法です。
即時抗告とは裁判所の審判に不服があるとき、不服を申し立てることで高等裁判所に審理してもらう制度です。
再生計画案の不認可が決定されてから2週間以内に不服申立てを行います。
まとめ
本記事では個人再生2回目について解説しました。個人再生2回目では1回目よりも裁判所や債権者の対応が厳しくなることが予想されます。
小規模個人再生であれば短期間に何度も行えますが、裁判所や債権者を納得させられるだけの再生計画案が必要となります。
そういったことも総合的に判断したうえで、個人再生2回目を検討しましょう。